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新元号「令和」にあやかって

新元号が「令和」に決まりましたが、皆さんはどう思いましたか?発表直後の反応は良いとも悪いとも言えないというどっちつかずの感じでしたが、今では6割以上の人が好印象ということです。好印象だからと言うわけではないですが、早くも新元号「令和」あやかり商戦が始まっています。たとえば、発表の3時間後にはパッケージに「令和」の文字がプリントされたバウムクーヘンがユーハイムから発売されたと思ったら、同じくバウムクーヘンを販売する「ねんりん家」からも「令和バーム」が発売されました。他にも、カステラ、日本酒、ポテトチップス、そして、タカラトミーからは「人生ゲーム +令和版」が発売されるそうです。このように「令和」を使用する商品やサービスが次々発売されるとなると、「令和」を独占使用したいと考えるのは世の常です。と思ったら、「“令和”が中国で日本酒含む酒類で既に商標登録されていた!」というニュースが入ってきましたが、では、日本で「令和」は商標登録されるのでしょうか?

このことをお話するにあたり、昭和から平成に変わった際にどのような出願がされ、登録になっているのかが参考になります。調べたところ、「平成」の文字からなる商標は、加工食料品、木炭などを指定した商標出願や、「ヘイセイ」及び「HEI SEI」の読み仮名付きの商標出願(因みにこの出願人はDr.中松氏であり、発表当日に出願しています)など数件ありましたが、いずれも商標登録されていません。なぜ商標登録されないかと言うと、これら元号「平成」のみからなる商標あるいは同視し得るもの(読み仮名付きなど)は、単に元号を表記しただけであり、商品名やサービス名として使用されたとしてもこれを見たものは誰かの商標であると認識しないと考えられるからです(この状態を「識別力がない」とか、「と言います)。

一方、「平成」の文字が含まれる商標、例えば、「平成だし」(指定商品「濃厚だしつゆ」など)、「平成の(乃)春」(指定商品「酒類」など)、「平成の華」(指定商品「手袋,化学品」など)等400件以上の出願がなされましたが、「平成だし」は「だし」の文字部分が商品の一般名称であることから、この商標は単に「元号+商品の一般名称」であり全体として識別力がない審査官に判断され登録されませんでした。「平成の(乃)春」に関しては商品「酒類」で5件もの出願がなされ一番早く出願された出願人に商標登録されました。今回もきっと、「令和の春」という商標が出願されると思います。なお、タカラトミーは「平成 人生ゲーム」という商標を登録していましたので、今回の「令和版」もきっと商標登録するのだと思います。

これから「令和」や「REIWA」など新元号にあやかった商品名やサービス名をつけ、それを商標登録しようということをお考えの方がいると思います。その際に気を付けて頂きたいのは、識別力がなければ商標登録されませんし、商品やサービスに付けたい名前は競合し早く出願した者に商標登録されますので、良い商品名・サービス名を考えたらすぐに商標出願をすることをお勧め致します。

弁理士 茅原裕二(かやはらゆうじ)