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バングラデシュ:未来の人材宝庫

 入管法が改正され、人材不足が深刻化する中で、外国人人材を受け入れる企業も珍しくなくなった。技能実習生では、長らく中国人がトップシェアだったのが、ここ数年でベトナム人が一気に増え、今では毎年10万人以上が就労している。私が現在駐在しているバングラデシュからは非常に少数ながら、今後需要が増えると思われる。なぜか。ベトナムからの実習生はその実績、人柄、能力などの評価が非常に高い。その一方で、送る側も迎える側もカネになる。そのため、いずれの側も悪業者がはびこっており、一部メディアで取り上げられる「失踪」事件もこうした背景がある。その分、後発であるバングラデシュにおいては、現地政府も日本政府と連携して現地送り出し機関を2機関に絞るなど工夫をしている。

縫製労働者

 バングラデシュは、「洪水」「テロ」「貧困」」などのマイナスイメージが付きまとっている。しかし、既に国連はバングラデシュを後発発展途上国(LDC)からの卒業要件を満たしているとし、現在は3年ごと2回の経過観察をしており、早ければ2024年に正式にLDC卒業する。また、縫製産業のメッカとして知られ、全輸出の8割以上はアパレル製品であり、そのうち6割はEU向けである。最大の顧客はH&M、ZARAだ。日本にもユニクロを筆頭に、しまむら、西松屋の他、イオン、イトーヨーカ堂などの大手スーパー向けにも大量の製品は出荷されている。特に、ユニクロのヒートテックは約1億5千万枚生産され、現在も増産増産を進めている。また、インフラ関係者の中でバングラデシュに行ったことない人はモグリと言われるかもしれない。それくらいに開発案件が多く、特にODAが手厚い。日本の円借款供与国はインドがトップで5000億円で、バングラデシュは2000億円の2位である。しかし、人口割にすると、10数億いるインドと比較すると、1億7千万のバングラデシュ人一人当たりの供与は飛びぬけている。

 

 さて、そんなこんなで注目を集めているバングラデシュだが、人材を受け入れるにあたり注意すべきことは何であろうか?御社の日本人人材がイスラム教徒が大半のバングラデシュ駐在になった場合を考えてみたら良いであろう。違う宗教、食事、商習慣などなど不安でいっぱいになると思う。これはバングラデシュ人も同じである。宗教の壁は食事に気を付け、お祈りの時間・畳一畳分の場所だけをきちんと設けてあげればそれで十分だ。日本では「インッシャッラー(神のみぞ知る)」は通じないし、渋滞で遅れると言った時間感覚も通用しない。ここは教育がすべてである。要はきちんとコミュニケーションを取ってあげることだ。そして、それは就業時間内だけでなく、時間外、休日の過ごし方もメンターを付けるなどしてケアしてあげると良い。バングラデシュにとって外国で就業する労働者の海外送金は貴重な外貨獲得源であり、就労者も本国に残した家族のために一所懸命働く意識は強い。受入体制をきちんとし、「アナタはウチにとって大事な人財である」ことを態度と言葉で示して上げられれば、生産性向上に大きく貢献することが大いに期待できる。

新居大介(あらいだいすけ)

縫製労働者