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2019年 Monozukulink.net総会「新潟のモノヅクリと歴史に触れる旅~その地域連携は如何になされたのか?」

レポート:川端政子

2019年10月3日~5日にかけて、今年で9回目となるMonozukulink.netの総会が新潟(燕・三条・長岡エリア)にて開催されました。

 

イベントの細かい概要についてはイベントHP(kotokotoサイト)でも報告がなされますのでここでは簡単にご説明するに留め私は違う観点でレポートを書きたいと思います。2011年の0回プレから数えると、26回目のイベントでした。近年は会員団体がいない地域で総会を開催することも多くなり、今年も会員団体が不在の新潟を開催地として選んだのは日本では現在最大規模ではないか?と思われる「燕三条工場の祭典」を視察したいという個人的な野望が有りました。

 

今年7回目の開催である「工場の祭典」は燕と三条エリアの結構広範囲にわたる100社以上がオープンファクトリーに参戦するという大がかりなイベントと言えます。まず、イベントについて詳しく知りたい方は『工場の祭典』HPを見ていただきたいと思います。ガイドブックも販売されているので新潟のモノづくりに興味がある方はそちらもなかなかのボリュームで見ているだけで楽しい気持ちになれるので、そちらもおススメです。さて、素晴らしいイベントについては本家本元さんがレポートされるのにお任せしするとします。

 

さて、ここからは気持ちを切り替えて筆者目線でレポートしてみる。

近年オープンファクトリーという取り組みは町おこし的な要素もあり、行政が支援しながら各地で開催される事も多くなってきたと思う。

 

様々な連携系のイベントに携わってきた私ですから地域の中での中小企業連携の良いところも悪いところもそれなりに理解しているつもりだ。他県からみると燕三条というのはそれで一つの地域のように認識されているとおもいますけれど実情は燕と三条というのが正しい。

 

地場産業発展の歴史的な観点からいっても地域特性がかなり違うといえる地域なのだ。その二つのエリアが仲良く手を組んで大がかりなイベントを開催していることに私は実のところ「マジか?」と懐疑的なところがあったのだ。

簡単に言い換えると、仲悪い地域(失礼を承知で)がどうやって上手く手を組んで大がかりなイベントを続けているのか?ということだった、

 

これは別にこのエリアだけにあるような話ではなく、日本というのは地方に行けば行くほどまだまだ閉鎖的だ。

「歴史を紐解けば川向うの村は敵であったので数百年たった今も仲が悪い。だから未だに川向うの人と結婚するのに苦労する」今の時代にそんなことあるの?と思うような話は実際あちこちにゴロゴロ転がっている話である。有名なところでいえば、福島県の会津の人と山口県の人を同席にすると険悪なムードになるなど・・・(戊辰戦争からの因縁)

 

時代が移り変わりこれだけ技術革新が進んでも人の心というのはなかなかに難しい理屈では割り切れないからこそ面白い。

そんな訳で私の中ではイベントそのものももちろん楽しみでしたがこの地域連携はどのようになされたのか?に興味があった。

 

兎にも角にも、運営に携わっている皆さんと接触しなければ実際の話は聴けないため、実行委員会さん主催のレセプションパーティーに参加してきた。

 

レセプションパーティーは燕市産業歴史館で開催されるとのことで、正直駅の近くではなくて歩いていくのはかなり大変なため燕三条駅からタクシーで移動、少し早くついてしまい、開場まで30分近くある。

なかなか楽しそうで、実際スプーンを作る体験もしてみたら、とても楽しい!

 

まだ今年リニューアルしたばかりという歴史館も見応えがあり普段からワークショップは体験出来るそうなので、もう少しPRしたら人気出るのではないかな?と感じた。

レセプションは地ビールや酒どころ新潟の地酒なども楽しめる立食パーティー形式で雰囲気も良く、なんだかそういうスタンディングバーに呑みに来た様な気持ちで楽しめた。

実際運営に携わっている地元企業の皆さんから話を聴いてわかったことは 『はじめは三条の補助金から始まったが、年々規模が拡大し、そこに燕が乗っかって、2013年に工場の祭典になった』

 

なるほど( ˙꒳˙ )

 

『もともとのイベントに関する三条の補助金は3年で終わり、4年目以降は国からの補助金がでることになり、さらに金額も倍以上になり、倍以上の規模で開催する方向性になっていった』 

 

国のチカラ、なんやかんやで凄い。(ʘ╻ʘ) 

 

『燕と三条はイベントを機に少し仲良くなったと思う』 

 

おおーっ!(๑•̀ㅂ•́)و✧ 

 

『しかし毎日違う場所でレセプションは行われておりレセプションも初日開催をどちらが先に開催するのか?について燕と三条が毎年交代で初日開催をするように決まっている。 今年は燕が初日開催のせいなのか、謎の力が働いて、産業歴史館もリニューアルされてこんなにお洒落になった。』 

 

おおぅ(@_@;)

 

微妙な気配は在るものの確かに昔より仲良くなったのだろう。過去の遺恨について、全てを洗い流すとまではいかなくとも、若い世代を中心に考え方が変化しているのをみんな感じているのだ。 また、なんとか話し合ってバランスを取る工夫も仲良くしたいという気持ちがあってこそである。 

 

結局、行動し成しえた結果に人はついてくる。新しいことを始めると反対する人はどんな組織の中にも存在する。 しかし、まずは小さくとも行動する。 私の周りにいる成功者は皆等しく、たとえスタートは一人だとしても諦めずトライしている。 どんなに達成が難しかしそうに見えたとしても、一歩踏み出さねば始まりもしないのだ。隣人は敵ではなく、価値観や文化が異なるパートナーかもしれない。地域間や異業種連携を進める際に、踏み出す勇気は一番大切な事ではある。 

 

その際に重要なのは、相手へのリスペクトである。 自分の生きてきた価値観で我々は優劣を決めて差別したり、見下したりしがちだ。結果繰り返されえ来た、悲しい侵略や民族消滅といいた歴史は繰り返されてはならないことである。日本では北海道のアイヌ民族や沖縄における琉球王朝などがそれにあたるだろう。文化が違えば美醜はもとより、生死における概念も価値観も違う。 

多様性という概念が一般化してきた時代だからこそ、新しい連携がどんどん生まれて行く時代が到来したのかもしれない。 地域間連携や異業種連兼とはそんな大げさな事なのか?と思う人がいるかもしれない。しかし、連携がうまくいかないその根底にある理由は実際そういうことなのだと私は思うのだ。相互理解の上での広義の意味での文化や思想の融合が平和的にできる事が今後目指すべきイノベーションの形なのではないか?

 

そんな風に考えることができた新潟イベントだった。

 

なお、今回私たちは主催のイベントとしては長岡エリアの行政の皆様の協力の元、企業見学のツアーや技術センターの視察を行い、最終日は長岡高専&新潟の4大学&NAZE様が主体となったJスクープという中小企業の課題解決のプロトタイプまでを学生が作成しプレゼンするというユニークなイベントにも参加させていただきました。

最後になりましたが視察させていただいた企業様や施設、長岡行政の皆様には大変お世話になりました。

心より感謝いたします。

 

(写真提供:日景 聡)